日本初のシルク・ドゥ・ソレイユ常設劇場の初演目「ZED」のレビューです

データ: 公演時間 前半1時間 休憩30分 後半1時間
イクスピアリ駐車場利用者は4時間無料

お断り
当レビューは正式公演前に行われる「トライアウト公演」のものです
シアター内はもちろん撮影禁止 ロビー撮影は可(8月23日現在)
この常設劇場は以前のイクスピアリの駐車場に建設されている。
場所は舞浜駅から見ると、イクスピアリ→アンバサダーホテル→シアター東京 となり、徒歩15分はみたほうがよい。(シーからは徒歩10分弱)

入場は開演の45分前から、とアナウンスされていたが、実際には1時間前でも入れた。
これがチケット。
私の場合はネット予約だったので、現地でチケットを入手。
当日券はアンバサダーホテル側にあるチケットブースで購入するが、予約引き替えの場合は専用の入り口から入り、室内にて確認事項を伝えて受け取る。
部屋はかなり豪華だったが、作り的にサロンのようで、緊急的にこの引き替え場所に使っているような感じだったので今後変わるかもしれない。

チケット価格はトライアウト公演で、プレミアビュー14,400 フロントビュー12,000円 レギュラー-7,840円 オーバービュー-6,240円。
本公演はこれに3000円前後が上乗せされる。
エントランスから入ると正面にはスナックとドリンクの販売ブース。
左手(写真下左)に物販ブース、右手(写真下右)には途中退出出入り口。
館内は禁煙のため、喫煙はこの出口で再入場チケットを受け取って出て、すぐ近くの喫煙スペースで。


販売されるスナック、ドリンクはなかなか多彩で、そのあたりは常設劇場ならでは。
シャンパンがあるとは思わなかったので思わずそのセットを購入。
内容は、シャンパン2杯とチーズで2600円。シャンパンはもう5割増しほどしてほしいところ。
その他、購入スナックはカスタードプリンスティックパイと季節のエクレール。
エクレールはシロップがけのナッツが入っている。
どちらも甘さ控えめでボリューム感もあって、小腹を満たす以上の満足感だ。

ただ、注意が必要なのが、食べる場所。
テーブルに相当する場所があまりにも少なすぎて、
のこのこ買っているとすべて持ったまま飲み食いしなければならなくなる。
シアター内に持ち込めるとアナウンスはしているが、実際に入れるのは20分前ほど。
このへんの対応は改善を急いでもらいたいものだ。
物販ブースはわりとこぢんまりとしていて、まだ始まったばかりということもあってか、商品バリエーションは少ない印象。ZEDのCDがなかったのは残念だ。

アメリカのシルク劇場の物販と比べると菓子類が多いのもお国柄だろう。

注目すべきはプログラムか。(写真上)
黒い「ZED手提げ袋」込みで2000円はお得感あり。(そのうち値上げの予感はするが‥)

この手のブースの特徴で、公演を見終わった後は感動した客が何か買おうと混雑するので、買うのなら公演前がベスト。一番のねらい目は「休憩中」だ。
公演内容紹介とレビュー

 
注意! ネタばれ多数あり これから見る予定の人は読まないほうが感動できます

最初にお断りしておくが、私のシルク・ドゥ・ソレイユ歴はたいしたことはない。
ラスベガスの”O(オー)”だけだ。
(演じ手がシルクではないが「O」の総合演出を手がけたフランコ氏演出「ラ・レヴ(ラスベガス)」も鑑賞した)
それを念頭に以下を読んでいただきたい。

”太陽という名のサーカス” カナダのサーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」初の日本常設劇場が、東京ディズニーリゾートに誕生した。
サーカス集団というと、「そんなものはたくさんあるじゃないか」と思う人も多いだろうが、シルクはサーカスに加え、芸術性と舞台装置も加えて、全体のエンターテイメント性を飛躍的に上げている。
もちろんサーカス部分も人間の極限に挑んだものが多く、それ故、世界に認められているのは周知の通り。

そのシルクを常設劇場で見る。これは今まで日本では実現されていなかった。
今まで日本で行われたシルク公演はすべてツアーであって、仮設劇場。
仮設と常設の違いは、何といっても設備の差につきる。
観客席はもちろん、舞台や舞台装置の規模はまるで別物。
特にシルクの舞台装置は、高さに加えて、地下にまで依存するところが多く、それによって舞台のパフォーマンスに差が生じるわけだ。
ちなみに総工費は140億円。「O」は9000万ドルなので、ZEDのほうが多少多いと言える。

前置きはこれくらいにして、鑑賞レビューに移ろう。

まずは観客の入り具合。
トライアウトではあるが、一般公開から1週間後の夏休み期間の土曜ではあったが、4割程度の空席は正直寂しい。
価格の高い前方ブロックは満席、中央から後方のレギュラー席が4割程度埋まり、最後方の1列のオーバービューがほぼ満席という状況。
ちなみに席数は2170席で、「O」と比べると300席ほど多いが、狭く見えるのは半円状に展開して奥行きがないためだろう。(座席サイズもアメリカサイズだったこともあるだろうか)

いずれにしても一般公開1週間で、天下のシルクの日本初の常設劇場の入りとしては、トライアウト公演でまだ本格的なプロモーションを始めていないとはいえ、寂しいのは間違いない。
一にも二にも、「シルク常設劇場」というものの認知が相当量必要に思う。

さて、いよいよショーの話に入るとしよう。
開演時刻の少し前からクラウン(道化)による客いじりが観客席で展開される。
これはこの手のショーでは定番で、もちろん「O」でも「ラ・レヴ」でも行われている。
アメリカに比べるとやはり客のノリはイマイチだが、土壌がないのでしょうがないところだろう。

そうこうしているうちにいよいよ舞台の幕があく。(といっても普通の劇場のように幕があるわけではない)

この冒頭部分は見事。素晴らしい。
これだけはネタばれしたくはない。実際に見てもらった方が良い。
「あっ!!」と息をのみ、そして‥‥
導入のつかみとしては完璧だ。

本編が始まり、最初に登場したのはバトントワラー。
今回のプロモーションには必ずと言っていいほど登場する、ZED唯一の日本人だ。
その妙技は経歴が物語るとおりの折り紙付き。
日本人だからだろうか、拍手も大きい。

その後の細かい演目説明は割愛するが演目的には大きく以下のようになる。

・ジャグリング
・トランポリン
・バンキン
・ラッソ
・ハンドトゥハンド
・トラピス(空中ブランコ)  他呼び方が不明なものいくつか

それぞれの演目の完成度はやはりシルクだけのことはある。
滅多にサーカスなどを見ないものにとっては、驚きの連続だろう。
私が見た中で一番ハラハラしたのは、ありきたりだが綱渡り。
客席の上から登場するときと、最後の大技以外は命綱なしで、高さ10mほどのロープ上でアクロバットを行っていた。
途中バランスを崩し、手でぶら下がるというハプニングもあり、ドキドキものだった。
もちろんその他の演目についても「さすがシルク!」という内容で、2時間を飽きさせない。
演目単体で見ればほとんど不満なく、ハラハラドキドキで満足するのは間違いない。

では、ここからは全体としての感想を正直に書こう。

演目自体のクオリティは高いレベルなのだが、どれも「どこかで見たことがあるもの」がほとんどで、そういう点では目新しさはほとんどないといえる。
シルクの舞台は基本的にはこのような演目を基本に構成しているのだろうが、それに絶対的な付加価値をつけるのはやはり「舞台装置」である。
「O」は、舞台すべてが「水」という他にはなかったもので、それにより「固い床」では不可能な大技なアクロバットや幻想的な演出ができるわけだが、この「ZED」ではそういったアドバンテージがない。
ステージも大きくないので、壮大なスケールの演目もなかなか表現できない。
では、ステージパイロや炎などの特殊効果があるかというとそれもない。
専用劇場というアドバンテージが、地下のステージ収納場所だけという感じがしてならない。

では、芸術性はどうかというと、これも薄いと感じた。
以前のコラムで不安材料として書いたが、やはり場所柄、客層を考えてダークな印象や難解に感じる芸術性は極力控えたようにも感じる。
音楽も芸術的で叙情的なメロディはほとんど使わず、演目にあわせた「サーカス感」のあるリズム系が多かった。
その結果、「アクロバットサーカス集団」という普通のイメージになってしまったのではないだろうか。

日本初の常設劇場ということに勝手に期待しすぎたのかもしれない。
どうしても「O」と比べてしまうのも悪いのかもしれない。
シルクの作品の中でも傑作と呼ばれるものと比べられるのもつらいところだとは思う。
しかし、客としては比べて当然だとも思う。
これは紛れもない「シルク・ドゥ・ソレイユ」の常設劇場であって、まがいものではないし、チケット料金も「O」とほとんど変わらないのだ。

厳しい意見を書いてしまったが、では「面白くなかったか」「満足できなかったか」というと、不思議なものでそんなことはなく、十分な満足感は得られたのはたしかだ。
あくまでも「今度はいったい何を見せてくれるんだろう」という「勝手な大きな期待」に達していなかっただけだ。
私はレギュラーの前の方で見たが、8000円弱の料金について惜しい気持ちはなく、満足できた。
これが前方の正式料金1万8000円だと、ちょっと考えてしまうのが正直なところだ。

以上が「O」経験者の正直な感想である。
(ZEDの内容にOLCがどれほど内部干渉しているのかは知らないが、今回のレビューに関してはパークレビューとは違い「完全にOLC抜き」の感想となっている)

いろいろ書いてはきたが、「シルク=サーカス」「他のシルク常設劇場は見たことがない」という人にとっては、まず間違いなく楽しめることは間違いないだろう。それだけの完成度とクオリティはさすがシルクだ。
演目内容は間違いなく世界トップレベルなのだ。
想像していた通り、小さな子供もけっこういたが、私の見た限りでは飽きて騒ぐこともなかったので、そういう層でも安心して鑑賞できるのではないだろうか。
これに関しては善し悪しは別としてマーケティングの勝利と言えるだろう。

今回はトライアウトという正式公演前の内容なので、失敗もたまにあったが、それも「ギリギリのところの技」と思うと納得もできる。実際、そういう技である。
内容も今後まだまだ煮詰められていくことだろうし、細かな変更は常時行われ、熟成されていくことは間違いないだろう。
ハードの変更はなかなか厳しいと思うので、ソフト面での熟成にはなるとは思うが、必ずや良くなっていくはずだ。

私は、1年後くらいにまた見に行ってみようと思う。


最後に。

すべての演目が終わり、場内に沸き起こるカーテンコールは、
日本ではあまりお目にかかれない「ほとんどの客によるスタンディングオベーション」だったことを付け加えて、このレビューをしめたいと思う。